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ポイント:コンティジェンシープラン、不測事象対応計画、予防と是正

コンティジェンシープランを考える


   JR東日本や大阪市営地下鉄、朝日新聞社、読売新聞社、共同通信社などで23日午前、端末から社内LANシステムへの接続ができなくなるなどのトラブルが相次いだそうだ。各社はトレンドマイクロ社のコンピューターウイルス対策ソフトが原因とみて調べており、トレンドマイクロ社も「ウイルスの情報が入っているファイルに異常があったため、更新した各システムに障害が起きた可能性がある」と話している。このような大企業だけでなく、個人ユーザーにも影響が出ているらしい。私のマシンにもトレンドマイクロ社のウィルスバスターが入っており、確かに23日朝、そのマシンの調子が悪かった。今、私のマシンは現在ハードディスクに問題があることを把握しているので、てっきりそれが原因だと思っていた…。

トレンドマイクロ社サポート情報

 私は、別にトレンドマイクロ社を責めるつもりでこのコラムを書いているわけではない。ソフトウェアも人間が設計作成している以上、完璧という訳にはいかない。むしろ問題は発生して当然と考えるべきだと思う。従って、システムトラブルが発生した後の記事に注目した。

 JR東日本や共同通信は、連絡を電話、ファクスに切り替え、特に問題は起きなかった。日本経済新聞、朝日新聞をはじめ各新聞社も、それぞれが対応し重大な影響はないという。大規模なシステムなのでコンティジェンシープランは2重3重に策定されているのが当たり前としても、なかなか、トラブルの発生時にはそのプランが活用できず、業務に影響を出してしまう事例が多い。ちなみにコンティジェンシープランとは不測事象対応計画といい、不測の事態が起きた際に、迅速に対応し被害を最小限に抑える計画の事である。

 ただ、今回報道されていないが、個人のユーザーにも影響が出たということは、中小企業で特に、この時間帯に、受注などを受けているシステムでは影響が出ているところもあると思う。今日は土曜日なのは不幸中の幸いかもしれないが、土曜でも当然業務を行っている中小企業は沢山ある。

 当然、何らかの形でトラブルの回避は出来たであろう。しかし、「トラブルの回避ができた、よかった、よかった」では済まさないで欲しい。不測事態への対応には予防と是正がある。ISOを知っている人には分かってもらえると思うが、当然、トラブルを未然に防ぐ予防ができれば最善である。たが、トラブルを経験後、それを是正しないのは、進歩がなく、非常に悪い。

 簡単なルールづくりでよい。「システムがダウンした場合は、Aさんが、BさんへFAXで伝票を送る。」だけでもよい。誰が、何を、どのようにするか、を決めておけば、最低限のルールとなる。あとは、更にFAXも使えない場合どうするとか、復旧した場合にどのようなタイミングで通常業務にもどすかなど、計画を充実させていけばよい。最初から完璧な計画を作ろうとして、途中で頓挫してしまうよりは、まず一歩進んだほうがよい。最初にも書いたが、しょせん人間の作るもので、完璧なものはありえない。何かを経験したとき、それをどのように生かすかが大切なのである。

 先にも書いたが、このコラムは、トレンドマイクロ社を責めるものではない。むしろ、これだけ騒がれるのは、トレンドマイクロ社が社会的に大きな貢献をしていることの表れである。ただ、トレンドマイクロ社は今回の件では、更新ファイルの完成後に不具合をテストしないまま配信していたらしい。その部分はソフトウェアを扱う者として、基本中の基本なので、今後、是正していただきたい。

 

2005年4月24日 宿澤直正


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