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ポイント:IT Doesn't Matter について、ITは経営にとってもはや重要ではない、ITは単なる道具、自社にあったペースで導入

IT Doesn't Matter について


   キーワード広告について書きます! と宣言してから早2週間。キーワード広告に関しての資料は、たまっているものの、それ以上に言いたいことがあり、なかなかコラムに書けません。いつか必ず書きますので、よろしくお願いいたします。

 今日、どうしても書きたかったコラムは、「IT Doesn't Matter(ITは経営にとってもはや重要ではない)」 という1年前にアメリカで発表された1本の論文についてです。この論文の存在は前から知っていて、かなり論争になっていることを、聞いていました。まだ、読んでいませんが、日本でもこの論文の訳が「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」というタイトルで出ているそうです。

 日経コンピュータ6/13号に、この論文に対しての詳細な記事があったので、わたしなりの意見を書いてみたいと思います。まず、この論文の主な内容は次のようなものです。


・ITで経営革新はおこせない。
・ITはビジネスに不可欠だが、戦略的に不可欠ではない。
・ITで先駆者になる必要などなく、他社に追随すべき。
・ITの価値よりも、その弱点やリスクに目をむけるべき。
・ITに過剰な投資をするべきではない。
・CIOが戦略的役割を担う必要などない。

 まず、的外れな意見ですが、私は「わかりやすいタイトルだなぁ」と思いました。最初にこの論文の存在を知ったのは、どこかのニュースサイトだったと思います。まずこのタイトルに引きつけられました。論文なのですが「マーケティング的につかみはOK」という感じです。

 そして同時に、その内容について自分なりに考えてみました。当時は日本語訳もなく、予想通り論文に対して反論するIT関連企業のトップの意見や、論文を擁護するビジネス雑誌の記事などを興味深く読んでいました。私はITコンサルですが、IT導入推進者ではありません。いつもお客さんのところで言っていることがあります。先ほどの論文の主な内容と対比させて書いてみます。ただ、私は中小企業を相手にしていることが殆どですので、その部分ではニュアンスが変わってくるかもしれません。

・IT=経営革新ではありません。ITは経営革新をするための単なる道具である。
・ITはビジネスにも、戦略的に不可欠ではない。ただ、それをスピードアップするためのものにすぎない。
・ITでは自社の経営資源(ヒト、モノ、カネ)に合った、適切なペースで活用する。
・ITの価値とともに、その弱点やリスクに目をむける必要がある。
・ITに過剰な投資をするべきではない。(全く同感)
・CIOは常に戦略的役割を担い、CEOと同等のレベルで経営について考える。

 うまく、対比されていない部分もありますが、ITは単なる道具であります。大抵の企業はITを導入する前にすべきことが多くあります。ITを導入するならば、それらをきちんと整備したあとで、ITを自社にあったペースで導入すべきだと思います。

 この論文は、IT投資をしても、効果が出ない経営者、いわば「情報化疲れの経営者」の叫びを代弁しているものかもしれません。私は、ITは「道具」と言いました。もう一つ「薬」に例えることもよくあります。これは、ちょっとした風邪に強烈に聞く薬を投与しても副作用があるだけで、医者は患者の症状にあわせて薬を処方すると思います。ITもそれと同じです。企業の体質を良く見て、必要ならば企業の体質にあうITを投与するのです。さもないと、ITの効果は出ず、むしろ副作用だけの逆効果になると思います。このようなIT投資が多く行われている中で、生まれてきたのが「IT Doesn't Matter」という論文なのではないかと、私は思います。

 お客様からのクレームは企業にとっての宝物です。この論文も。IT業界にとってのクレームととらえて、頭ごなしに否定せず、うまく活用すべきだと思います。

参考「日経コンピュータ6/13号」

2005年6月20日 宿澤直正


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