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ポイント:IT投資促進税制、情報基盤強化税制、セキュリティ、税額控除、特別償却、ISO/IEC15408、ISO15408、IT減税

IT投資促進税制から情報基盤強化税制へ


情報基盤強化税制の創設

 IT投資促進税制が様変わりして「情報基盤強化税制」として創設される。IT投資促進税制が今年の3月に廃止(というかもともとその予定)されるとのことで、日本経団連の奥田会長は、「日本のIT化はまだまだ遅れている」として期限を延長するよう求め、また、経済同友会の北城恪太郎代表幹事は、「個別の優遇税制より、全体として法人税率を引き下げてほしい」と述べ、打ち切りもやむなしとの考えをにじませた。IT投資促進税制の存続をめぐり経済界に温度差が出ていた。

 その議論も一段落ついたということで、「情報基盤強化税制」が新設される。内容の変更に関しては色々意見もあるが、それは後として、まず「情報基盤強化税制」がどんなものかをみてみる。

 「情報基盤強化税制(当時は戦略システム・セキュリティ投資促進税制という仮称)」は、企業の国際競争力向上を目的に経済産業省が検討しており、情報セキュリティを中心とした情報システム投資に対しての減税になるのではといわれていた。

 ほぼ、その通りになったようである。産業競争力のための情報基盤強化税制の創設として、総務省のページに説明があったので引用させていただく。

情報基盤強化税制の創設

(1) 目的 :  情報セキュリティ強化と国際競争力強化の観点から、高度な情報セキュリティが確保された情報システム投資を促進し、情報基盤を強化する。

(2) 対象 :  青色申告書を提出する事業者

(3) 対象設備 :

(4) 税制特例 :  税額控除(10%)又は特別償却(50%)の選択適用

(注1) 年間投資額:1億円以上(資本金1億円以下:300万円以上、資本金1億円超10億円以下:3,000万円以上)

(注2) 資本金1億円以下の法人については、リース投資も税額控除の対象。(リース費用の総額:420万円以上)

(注3) 税額控除について、法人税額の20%相当額を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しを認める。

(5) 適用期間 :  平成18年4月1日から平成20年3月31日まで(2年間)

IT投資促進税制と情報基盤強化税制での比較

 先にも述べたが、正式名称が決まるまでは、自民党の経済産業部会において「戦略システム・セキュリティ投資促進税制」といわれていた。その方がなんとくなくイメージがわきやすい。情報基盤強化税制と言われても、どうもピンとこない。

 全ての企業(青色申告企業)が行う自社利用のIT投資に対して、10%の税額控除と取得資産の50%の特別償却の選択を認める制度という点では変わっていない。

 変わったのは特例を受ける対象と、その条件である。

対象の違い

■IT投資促進税制

IT投資促進税制の対象は、以下のようにハード・ソフトの多岐にわたっていた。

@電子計算機及び附属設備
Aデジタル複写機及び附属設備
Bファクシミリ及び附属設備
CICカード利用設備及び附属設備
Dデジタル放送受信設備
Eインターネット電話設備及び附属設備
Fルーター又はスイッチ及び附属設備
Gデジタル回線接続装置
Hソフトウエア

■情報基盤強化税制

一方、創設される情報基盤強化税制に関しては、以下のようにシステム、セキュリティ強化が前提とされている。

※ISO/IEC 15408に基づいて評価・認証されたもの

 ハードウェに関しては、中小企業投資促進税制が拡充・延長されているので、対象となっているものならば、そちらを使う事になるのであろう。ちなみに電子計算機やデジタル複合機やソフトウェアが一定の条件のもと対象になっている。

条件の違い

■IT投資促進税制

設備の取得価額要件は、資本金の規模とハード・ソフトの別によって分けられる。

リース契約期間4年以上、かつリース資産の耐用年数を超えないことが条件である。

■情報基盤強化税制

ISO/IEC15408への注目度

 細かい内容に関しては、総務省のページをみていただくとして、注目すべきはOSやファイアーウォールに対して「ISO/IEC 15408に基づいて評価・認証されたもの」という条件が付加されたことである。

 ISO/IEC 15408とは、セキュリティ関連の国際標準規格であるが、あまり知られていない。以前「ISO/IEC15408に関しての第一歩」というコラムを書かせていただいた。セキュリティ関係のISOというとISO17799を思い出す方が多いと思うが、ISO17799との違いも書いてある。(ISO17799はISO27000シリーズで統合されるのでご注意。またコラムに書きます。)

 まだ、一般的にメジャーではないこの国際規格が今後注目を集めるのは間違いないであろう。

情報システムへの投資で思う事

 最後にいい機会なので、情報システムへの投資に関して、いつも思っている事を書かせていただく。

 情報システムへの投資も他の設備投資と同じように、収益性や生産性で費用対効果を考える。ただ、情報システムの場合、費用対効果の測定が難しいといわれる。その理由は何であろうか? 情報システムへの費用対効果の測定を難しくするキーワードとして、「情報システムは機械設備への投資ではなく経営革新への投資」ということがあると思う。経営革新へ投資するので、効果が出るまで時間がかかったり、予想と違い部分に効果が出たり、イマイチ相関性が分らなかったりする。それらは、通常の設備投資との違いを理解して、受け入れていくべきであろうと考えている。

参考
 日経コンピュータ12/12号
 総務省のページ

関連コラム
情報基盤強化税制と中小企業投資促進税制 2006年04月03日記述
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IT減税の年度内廃止について思う事 2005年11月28日記述
ISO/IEC15408に関しての第一歩 2005年11月21日記述
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2006年02月27日 宿澤直正


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