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ポイント:顧客志向、クレーム、Web2.0、ロングテール、自分のこだわり、お客様の声

こだわりに賛同してくれるお客様が大切


顧客志向の時代

 これはブログのネタなのかもしれませんが、少し気になることがあったので書き留めておきます。顧客志向という言葉があります。様々な顧客の意見をモノ作りやサービスに取り込んで顧客の本当に望むモノ、サービスを提供すると言う事です。顧客にとっては自分の必要とするモノを手に入れられ、モノ、サービス提供側としては顧客が増えて売上げも上がるという考え方です。

 お客さんのニーズをいかにつかむのか。DCM(デマンドチェーンマネジメント)という、いわゆる川下(消費者)からの情報流の管理が重視されています。消費者の声を取り入れて、大きなヒットを生み出している事例は少なくありません。

 少し前「クレームは宝」という視点でクレームに真摯に対応し、改善を繰り返して、顧客に満足してしてもらうという番組が放送されていました。「クレームはピンチでもあり、チャンスでもある」という言葉は本当に重みのある言葉だと思いました。これからも「顧客志向」は経営における大切な考え方として存続していくことは間違いないと思います。

「お客様の意見が全てです」は正しいのか

 ところが「お客様の意見が全てです」という話を時々きく事があります。これは顧客志向の考えからは一見正しいように見えますが、少し違っていると思います。

 あるサイト運営者からこんな話を聴いたことがあります。「自分の売りたいモノを自分の言葉で紹介し、必死にもがいてここまで売上げがあがりました。ところが、お客さんからのこれも取り扱って欲しい、あれも情報提供して欲しいといった言葉に従ってサイトを改善していたら、売上げが落ちていってしまいました」これは、少し極端な例かもしれませんが、決してレアケースの話ではありません。

 この例は、顧客の声に耳を傾けすぎたことによって、自分のやりたい事、ビジョンがぶれてきてしまい、本来のファンからサイト離れがおきてしまった例です。サイト離れの心理はひとつではないと思います。情報量が増えすぎて自分の本来欲しい情報が探しにくくなった・・・、このサイトのこだわりに対してのファンだった人たちが離れていった・・・、中には、このサイトの主旨に共感して、サイトを一緒に育てていこうと考えていたのに、方向性が見えなくなってしまった・・・等、いろいろと考えられます。

 このケースからは2つのことを学べると思いました。ひとつは、顧客の言う事を全部聴きすぎると「自分のこだわり」がぼやけてしまうということです。もうひとつは「こだわりはファンと一緒に作るので、お客様の声はやっぱり大切」という相反する2つのことです。

商品提供側・受容側が平等な関係

 先に相反する2つの教訓として、お客様の声を聴きすぎると「自分のこだわりがぼやける」、お客様の声を聴かないと「ファンと一緒に作るべきこだわりが独りよがりになる」ことをあげました。

 この2つの教訓は決して相反するものではないと私は考えます。優先順位ですが「自分のこだわり」が最初にくると思います。そして「こだわりを成長させる」声としてお客様がいるのです。この順番を逆にすると「こだわりがぼやける」ことになります。

 顧客志向からは反しているように感じますが、そうではないと思います。今は個性の時代です。一億総中流時代という「みんな一緒」がもてはやされた時代は終わろうとしています。マスメディアによって、みんなに同じ情報を提供するプロモーションは効果が薄くなってきています。ロングテールという言葉とともに、「みんな一緒」の考えにもとづく「パレートの法則」が成立しなくなりつつあることはWeb2.0関係の本を読めば必ずといっていいほど書いてあります。

 今は、様々な業種業態が登場して、お客様は自分の欲しいものを「ネット検索」という武器で容易に見つけれらるようになりました。逆の言い方をすると自分のこだわりをお客様が見つけてくれるのです。つまり、自分のこだわりに賛同してくれるお客様を大切にすることがもっとも大切なことなのです。

 商品・サービスの提供側が大企業、中小・零細企業なのかによっても違うと思います。経営資源が豊富な大企業ではなく、特に中小・零細企業では、顧客の話に耳を傾けすぎで「自分を見失う」より、自分のこだわりに賛同してくれるお客様を大切にしなければならないと思います。

 大量消費のプロダクトアウトの時代、顧客の意見が絶対である少し偏った顧客志向の時代から、また少し、商品・サービスの提供側と商品・サービスを受ける側の関係が変わりつつあると思います。それが商品・サービスの提供側・受容側が平等な関係ということなのではないかと思います。

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2007年06月04日 宿澤直正


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