ポイント:好かれるベンダー、嫌われるベンダー、ベンダー選定、プロのベンダー、売上げ至上主義、ビジネスの常識
日経コンピュータの8/8号に「こんなベンダーを嫌われる」という記事があった。大変興味深く読ませていただいたが、逆説的に考えれば、「こうすればベンダーは好かれる」といえると思う。
まず嫌われるベンダーであるが、以下のようなベンダーだそうだ。
もと、SEとしてはかなり耳にいたい言葉である。しかし、コンサルでユーザーに近い立場で見ている今は、もっともな意見ばかりである。
まず、最初のカテゴリーの「プロと呼ぶには程遠い」であるが、SE時代、お客様からのニーズをヒアリングして理解するのが精一杯だった。当時はそれでも理解でき、システムも組みあがったことに満足していた。しかし、今はそれでは、顧客満足は得られない事がわかっている。お客様の言った事を100%実現したシステムを作ったとしても、出来上がったものは使われない事がある。なぜ顧客の要求を100%実現したのに使われないのだろうか? それは、お客様はシステム構築に関しての知識は100%ではないからである。一方のSE側は、システムに関しての知識はあっても、業務知識はその都度補充する事が多い。このアンマッチが、出来上がったシステムに対して、「言った事はたしかに機能的に実現しているけど、実際の業務改善につながっていないよ・・・」という思いになっていく。
「手戻りは日常茶飯事」「トラブルの原因はいつも不明」「成果物はバグだらけ」は確かにSEとしての力量不足かもしれない。しかし、原因は業務知識のアンマッチにより、仕様的な問題である事が多い。つまり、お客様の言ったシステムでは、お客様の満足は得られないのが現状なのである。
「売上げ至上主義」「ビジネスの常識がない」の2つのカテゴリーに関しては、弁解の余地はない、日経コンピュータ8/8号には実際に顧客の信頼を失った実例があったが、決して珍しい話ではないと感じた。お客様は予想以上にベンダー(SE)の動きを見ている事を認識すべきだ。
以前こんな話を聞いた事がある。お客様の営業成績を管理するシステムを作っていたSEが最終段階で、客先で実際のデータを用いて結合テストをしていた。規模の大きいシステムであったので、印刷テストでは、膨大な帳票が印刷されていた。その帳票は床に山積みになっていた。SEは全く悪意は無かった。しかし、長時間のテストで疲れていて、その山積みになった帳票の上に、うっかり足を置いてテストを続けてしまったらしい。それを見ていたユーザーは「当社の営業が苦労して積み上げた営業成績の上に足を置くとは何事だ!」と激怒したそうだ。SEにとっては、テストデータであっても、お客様にとっては、自らが業務で行った血の結晶である。
この話はほんの一例であるが、お客様はベンダーをよく見ているという点では、わかりやすい例だと思う。
ぜひ、「プロと呼ぶには程遠い」「売上げ至上主義」「ビジネスの常識がない」の3つのカテゴリーに書いてある「嫌われる要素」の逆を言って、「お客様に好かれるベンダー」になっていただきたと思う。
参考「日経コンピュータ8/8号」
関連コラム
ベンダーにとって困った客って? 2005年12月19日記述
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2005年9月5日 宿澤直正 記
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