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ポイント:IT用語、社内情報化、コミュニケーション、理解、IT講習会

IT用語連発がコミュニケーションをダメにする


ある訪問先でのIT用語連発体験

 事務所のつぶやきブログに書いたほうがいい内容かもしれないが、あえて時事コラムに書かせていただく。気軽に読んでいただきたいと思う。

 先日「BPRがしたい」とストレートにしたい事を言ってきたお客さんを訪問したとき、「BPRをするってことはERPを導入する事ですよね。やっぱりASPがTCOを引き下げますか?」と早口でお客さんに言われた。この客さんは、とても勉強家である。会社を経営しながら、いろいろ新しい事を勉強している。ただ情報活用に関しては「出遅れた」と感じているようで、今、情報化への関心がかなり高い。

 その結果、先ほどのBPR、ERP、ASP、TCOとIT業界を複雑怪奇にしている英文字略語が4つも登場するセリフになったのだ。私は、お客さんへの確認の目的で、先ほどの英文字略語が4つも登場するセリフを言い直そうとした。「BPRをするってことはERPを導入する事なのか?、その場合、ASPがTCOを引き下げることにつながるか? という2つの質問ですね。」とスムーズに聞き返すつもりだった。ところが「BPRをするってことはイーアレッポ…、ポ、イー、イーアアール…」とERPのところで思いっきりかんでしまった。「いやぁ、IT用語って本当に難しいですね。」と誤魔化した。

 ERPのところでかんだのは事実で、誤魔化したけど言い訳はしない、というか出来ない。ただ、その場には別の社員もおり、おそらく社長がそれだけビシッとIT用語を使いこなしてしまうと、社員は質問もできずに、意味が分からなくなったまま、話が進んでしまっていたであろう。偶然、私の滑舌の悪さが、その場にひと呼吸入れる効果があったようだ。さらに、ITコンサルの私が「IT用語が難しい」と言ったので、その場にいた勇気ある社員が「勉強不足で申し訳ありませんが、先ほど社長の言われた言葉を、もう少し分かりやすく説明してもらえませんか?」と質問した。

 この社長は、勉強家であると同時に頭も切れるので、社員の質問の意味を即座に理解し、社員のITレベルにあった、的確な説明を行なっていた。私は、その様子を横で見ていて、不本意ながら、「自分の滑舌の悪さが少し役に立った」と思い嬉しかった。

7割以上が「理解していない IT 用語使う」

実は先日、新聞に以下のような記事が新聞に載っていた。別のコラムで紹介したのでご覧になったかともいると思うが、再度紹介させて頂く。


アルファベットで構成された IT 用語の意味がわからず、調べようとしてもまた意味のわからない言葉で説明される――そんな経験はないだろうか。もっと簡単な言葉が必要とされている。専門用語がわからない人は新しい技術を使った製品の購入を遅らせる 傾向 もあるというのだから。

インターネットコム株式会社 と 株式会社インフォプラント が行った、IT 関連用語についての調査によると、「周りが使っているために、自分も意味を理解していない IT 用語を使うことがある」という人は7割を超えている。

IT 関連用語はなぜ難しいのだろうか。理由として多く挙げられたのは「アルファベットが多い」(172人)、「短縮したものが多い」(148人)、「増えるスピードが速い」(99人)、「周りに教えてくれる人がいない」(87人)、「耳になじまない」(82人)などだった。「アルファベットが多い」や「耳になじまない」などの理由を見る限り、そもそも日本人には合わないものなのかもしれない。

また、周りが使っているために、自分も意味を理解していない IT 用語を使うことはあるか尋ねたところ、40歳以上は「よくある」(15.0%)、「たまにある」(62.0%)の合計が77.0%に上り、19歳以下(合計72.0%)や20代・30代(合計71.0%)でも7割を超えている。

〜以下、略

 この記事を読んで分かるように、IT用語は、「増殖する」「短縮する」「欧米文字が多い」の混乱の3元凶と加えて、その意味を質問する事は「勉強不足」と思われるのではないだろうかという恐れから質問もなかなかできない。

 その結果、みんな分かった振りをしていているだけで、実はみんな理解していないなんていう会議が日本中で行なわれていると思う。そのような会議は議論がかみ合わないはずで、結局無駄な時間をすごしてしまう事になるだろう。

IT用語連発がコミュニケーションをダメにする

 つまり、IT用語を連発することはコミュニケーション自体をダメにするという恐れがあるということである。そんな時コミュニケーションがちゃんと出来ているようにするにはどうすればよいのであろう。

 私もIT講習会を、いろいろな場面でさせて頂いているが、必ず事前にいう事がある。それは、「意味の変わらないIT用語を私が使った場合は、すぐにその場で質問してください。あなたの分からない言葉は、間違いなくこの会場の何人かは分からないはずです」というお願いである。

 よく、講演時間がタイトなため、「途中の質問はご遠慮ください」という講演がある。普通、途中で分からなくなってしまう講演は、最後までわからなくなっていることが多い。ということは、その人の貴重な時間を無駄視してしまっていることになる。また私も何人かにとっては無意味な話を途中からしている事になる。それはむなしい話である。

 少人数のIT講習会ならば、この方法は有効である。ただ、人数の多いIT講習会では やはり質問はしづらいと思う。そういう時は、こちらから「質問はありませんか?」と何回も聞いてみる。すると、ポツポツと質問が出ることがある。つまり、問いかける、難しいIT用語を易しく説明するといった「話し手側からの地道な心遣い」が、IT用語を使いながらという複雑怪奇なコミュニケーションを少しでもスムーズなものにしていくのだと思う。

 これは、まさしく「言うが易し」の話である。なかなか私自身も実践が出来ていないのが実情である。今後も継続しての訓練と努力が欠かせないと思う。

2005年10月10日 宿澤直正


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