ポイント:CALS/EC、電子納品、ITスキル、ITリテラシー、ソフトウェア導入
顧問先の関係で「建築新聞5/18〜6/8」まで連載された「電子納品成功へのプロセス」という記事に関しての意見を求められました。これはCALS/ECに限った話ではなく、どの企業の情報化でも共通の悩み事なので、コラムに書かせていただこうと思います。
CALS/ECの導入効果を引き出すには地方中小建築業者の対応が鍵を握る、と記事はストートします。その理由はCALSを少し説明しないといけないと思います。
CALSとは生産者と消費者の間で製品やサービスに関する情報を共有し、設計、製造、調達、決済をすべてコンピュータネットワーク上で行なうための標準規格のことです。ECの方が一般的ですよね。CALSは当初は資材調達だけを目的としていましたが、次第に適用範囲が広げられてきました。しかしもともとのスタートの背景からも建築業界でよく使われています。
今回の記事ではCALS/ECとして「電子納品」という言葉で表現しています。建築業者は中小企業が多いため、電子納品を成功の鍵は中小企業が握っているといわれる所以だと思います。
まず、電子納品の今後の必要性を経営者、社員一同が同じレベルで理解することからスタートだと思います。公共事業は地方公共団体からの発注が約7割を占めており、必要性の理解は進んでいると思います。
さて、ここからが問題と言えそうです。CALS/ECを支援する「納品支援ソフト」を導入すれば、電子納品に対応できた、と考えてしまっている企業が本当に多いようです。これは何も電子納品のシステムに限った事ではありません。「ソフトウェアの導入完了」イコール「システム構築の完了」という誤った認識です。ソフトウェアの導入が完了したら、企業での運用がスタートします。ソフトウェアの導入の完了は、始まりだと考えたほうがよいのです。
ソフトウェアは所詮道具です。それを使うヒト次第で役にも立つし、無用の長物にも成り下がります。
そこで、課題となるのがITという道具を使う経営者、社員一同のITリテラシーの問題です。最近はWebや電子メールが一般的になり、かなりITリテラシーの底上げがされた気がしています。しかし、この新聞記事を読むと、まだまだのようで、実際にソフトウェアを使うにはハードルが高いような事が書いてありました。
ITに関する教育の重要性も記載されていました。その企業でITを活用して何をしたいのかという目的からも必要とされるITスキルは異なってきます。問題なのは、同じ会社の中で経営者、社員間でのスキル格差が生じており、スキルの低いヒトに合わせた運用になったり、一部のITスキルの高いヒトに仕事が集中したりする、という現状です。
一部のITスキルの高いヒトに仕事が関連する作業が集中している中小企業は多いです。なぜなら、専任の社員や、部署を置くことはリソースの関係で難しいからです。そういう意味では、一部アウトソースしたり、難しいながらも長期的な視野でITサービスに関する部署を作り上げていく事は、企業戦略として必要であると考えます。つまり、CALS/ECを運用していく社内体制の整備が重要になってくると言えるでしょう。
2006年07月17日 宿澤直正 記
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