ポイント:個人事業、法人事業、選択基準、節税対策、ビジネスプラン
法人組織にするためには、定款を作成したり、登記をしたりと面倒な手続きがある。この部分を司法書士に頼めば代行してくれるが、当然20万程度の料金がかかる。そのための費用も資本金のほかに、定款の認証料や金融機関への払込手数料、登記の登録免許料などを合わせて20〜25万円ぐらいが余計にかかるし、設立手続きのために最低でも2週間は見ておく必要が
ある。
個人事業の場合は、登記という作業自体がない。事業を始めれば、それが設立である。せいぜい、税務署に事務所の開業届けを出す程度でよい。
法人の場合は、事業の内容を変更したい、新しい分野に進出したい(事業目的の変更)、事業をする場所を変えたい(本店の変更)というときには、定款を変更するなどの手続きが必要である。万が一、出資者の反対があれば、せっかくのアイデアが頓挫してしまうこともある。そして、事業そのものを辞めたいと思ったときにも出資者の利害がからむため、慎重に対処する必要があり、廃止するための登記、清算のための手続きをしなければ
ならない。
個人事業は、始めようと思ったらすぐに始められるのがメリットだし、事業を辞めるときにも登記手続きや清算といった面倒な手続きがないため、いつでも辞めることが
できる。身軽なところが個人事業の大きなメリットといえる。但しすぐに辞めれるということは「決意」という点ではマイナスとなるかもしれない。
法人の場合は、有限で300万円、株式で1000万円の最低資本金が定められており、その分信頼度は高い。また、情報の開示が義務づけられているので、その面からでも信用度は高くなる。1円創業に関しては、情報の開示は義務付けられているものの、資本金の面で信用度は低いと言わざるをえない。
一方、個人事業は最低資本金は定められておらず、情報も開示されていないため、一般的に信用面で不利となる。たとえ優秀な人であったとしても、個人事業には仕事を出しにくいという会社も事実多く存在
する。 ただ、この信用度は有限会社と株式会社の間にも、確実に存在していることを感じる。
税制面でいうと、個人事業でいいことは「簡単な記帳でもかまわない」の一つしかないと言い切っていいと思う。様々な節税対策は法人に対してできるようになっている。以下に税制面での法人のメリットを列挙した。
@税率が一定である。
個人事業は最高税率37%までの「累進課税」で、あなたが稼げば稼ぐほど税金を取られてしまう。しかし会社法人は年間所得800万円以下なら22%まで、最高でも30%までの一定税率である。会社法人を設立すれば、あなたがどんなに儲かっても基本的に30%までしか税金がかからない。
たしかに、儲けが出てないうちは個人事業の方が税率は低くなるが、最初から儲からないことを前提に事業開始することは勧められない。それなら儲かってから「法人なり」する手もあるが、ハンコや口座などの変更に、また金がかかってしまうことを忘れてはいけない。他にも・・・
A給与が損金として落とせる。
B経費の範囲が広がる 。
B青色欠損金の繰越控除期間が5年認められる(個人は3年)。
・・・など、税制面のメリットがある。
これらの事を考えて、個人事業か法人事業かを選択することになる。いろいろな状況と考えがあると思うが私としては「ある程度自己資金を貯め、きっちりビジネスプランを練って、法人事業としてスタート」が
理想なのではないかと考える。
関連コラム
個人所得税改革について 2005年6月27日記述
年末調整に関する作業の流れと提出書類 2004年12月6日記述
個人事業と法人事業の選択基準は? 2004年9月13日記述
個人事業開始の届出書類 2004年9月6日記述
2004年9月13日 宿澤直正 記
Copyright (C) 2005 宿澤経営情報事務所