ポイント:インターネットの普及、RADツールの発展、簡単・便利、深く考えない
日経新聞に「今の高校生はいつでも情報を取得できる」という意識があり、その結果「大学選びも直前に調べて十分検討していない学生がいる」というコラムが載っていた。このコラムのもつ意味は非常に深いと思う。
インターネットの普及により、ITを活用している人は急激に増えている。その結果、「いつでも欲しい情報は取得できる」という意識はかなり一般的なものになっている。しかし、ブログの発展などにより、以前とは格段に大量な情報がネットに氾濫している。たしかに、検索サイトでキーワードで検索すれば、欲しい情報に似た情報は簡単に得る事ができる。しかし、それはあくまで「欲しい情報に似ているだけ」で「欲しい情報そのもの」ではないことが多い。得られた「欲しい情報に似ている」材料を用いて、自分の「欲しい情報」に料理する必要がある。それは結構時間のかかる作業である。
もうひとつ、ITが発展して似たような状況がある。それはRADツールの発展だ。RADとはRapid Application Developmentの略で、簡単に言うと、ビジュアル的に簡単にプログラムを作る事ができる。VisualBasicはその代表であろう。よくお客さんのところで感じることの一つに、RADツールの発展により、容易にプログラムが出来るため、各部署がそれぞれ必要なシステムをAccessやVisualBasicでどんどん作ってしまい。顧客マスタ、社員マスタといったマスタ類があちこちの部署で重複存在し、場合によっては同機能のプログラムも重複存在している場合がある。この様な場合、情報資源の重複による管理の難しさが問題となる。また、どこにどのようなデータが存在するのか誰も把握できなくなって、情報セキュリティの面からも問題がある。
以前であれば、プログラムを作る事は大変な事である。念入りな設計作業に基づいてシステムは構築されるべきである。ましてや、今の私の立場は、全社最適を目指し、経営課題クリアのための情報化戦略をたてて、それにあったシステムを構築しましょう、と提案している。竹の子のようにあちこちに似たシステムが成長し、どんな情報が管理されているかだれも把握できていないという状態は、決して情報化とは言えない。
世の中が簡単・便利になっていく事は、よい事である。しかし、簡単・便利になっていくということは、それだけ人は考える時間ができ、また、考えなくてはいけなくなっているということである。誰でも簡単にできる事なら、差別化の工夫をしないと生き残れないという、とても単純な経営理論である。
簡単・便利になったことに安心してしまっていると、足元をすくわれかねないので注意していただきたいい。簡単・便利になってのは決して自分だけではなく、世の中みんながそうなっているのである。
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2005年10月31日 宿澤直正 記
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