ポイント:レビュー技法のメリットと問題点、レビュー技法の種類、インスペクション、モデレータ、ウォークスルー
レビュー技法のメリット・問題点(前編)では、パスアラウンド、ペアレビュー、ウォークスルーについて考えたので、後編ではインスペクションついてまとめてみます。
レビュー技法の中でも、最も最も体系的で厳格なレビューといわれるのが「インスペクション」です。 インスペクションの特徴としては以下にまとめます。
インスペクションは、バグの摘出を効果的に実施することができるといわれますが、他のレビュー技法に比べ、工数がかかる課題もあります。 すべてをインスペクションすることが困難な場合には、品質リスクの高い最も効果の出そうなところにをインスペクションで行い、それ以外ではパスアラウンドやペアレビューなどを利用とよいと考えます。
インスペクションではミーティング前の「準備の徹底」がそのプロセスに入っています。準備段階で作業成果物とチェックリスト、ソース文書を用いてバグの候補と改善の機会をみつけておくようにします。それは極力ミーティングの時間を短くすることを目的としています。
ウォークスルーは作成者がミーティングを主導していきます。一方、インスペクションでは、作成者がモデレータ、読み手、記録係などの役割を務めることを許されないことにあります。その理由の一つとして、作成者はその成果物に関してもっとも詳しい人であるので、欠陥や課題の指摘に集中してもらうことにあります。成果物作成者はもっとも優秀なレビューアになるとの考え方です。
インスペクションはメトリクスの収集、分析を行いレビュープロセスの改善につなげます。 インスペクションは、そのプロセスの充実度から作業成果物とその作成プロセスの品質改善に最も効果的と言われています。 ただし、すべてのレビューをインスペクションで行う必要はなく、許された時間、コスト、求められる品質で最も有効な方法を選択するのがよいです。
インスペクションでは、作成者が運営に絡む役を務めないことが大きな特徴です。その理由を考えてみます。
作成者がモデレータとしてミーティングを取り仕切ったり、他の参加者に成果物を説明したのでは、客観的な立場を維持することがすることが難しくなることがことがあります。 自分の成果物に関して提起された欠陥や課題に対して感情的になってしまう場合です。 また、成果物が読み手を行った場合、不安な部分は、無意識に曖昧に説明してしまったり、飛ばしてしまったりする可能性もあります。
作成者がモデレータや読み手、記録係などの役割を担ったまま、議論に参加しても、他の作業に気を取られて、議論に集中することが難しくなります。 作成者はその成果物に関して最も詳しいため、他の参加者には分からない欠陥に気づいたり、指摘しないような課題についても考えることができると考えられます。
読み手を別の人が担当することにより、曖昧な仕様など、解釈の違いによる欠陥を発見しやすくなります。 別の人が説明したり、読みあげたりすることで、その際の「違和感」を浮き彫りにします。 その「違和感」こそが、欠陥であることが、よくあります。 作成者が読み手になってしまうと、自分の解釈した通りの説明をするため、欠陥があっても、そのままミーティングが進行してしまう危険があります。
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2013年09月23日 宿澤直正 記
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