ポイント:重大な問題は取り除いた成果物を目指す、指摘の場に感情を持ち込むことを自制、欠陥指摘の際に言い方にも配慮
前回のコラムの続きです。レビューをうまく行うために考えるべきポイントは3つあると考えています。これはレビュー研修の最初に必ず話ことで、一つは「視点」、一つは「技法」、一つは「意識」です。コラムを三回に分けて、それぞれを考えています。最終回は、レビューを行う「意識」について考えてみます。
コンサルや研修でも最も受講者のみなさんの「気付き」が多い部分です。今回はコンサルや研修で、意識の大切さを「気付く」ことができましたと声を頂いた部分をピックアップします。なお、書きたいことが多くなってしまったので前編・後編に分けさせてもらいます。
レビューに対する意識に関しては「レビューの目的を再確認」しておくことが大切です。目的を間違えると、見つけやすい軽微な欠陥の指摘に終始してしまうことがあります。「表面的な欠陥したみつからない」「議論が長くなりレビューが完了しない」は「技法」でも書きましたが、やはり「意識」の問題であることが多いです。
レビューの目的は「重大な問題は取り除いた成果物を目指す」ことにあります。完璧な成果物を目指してすべての問題を指摘しようとすれば無理が生じてしまいます。レビューア(指摘する人)の人員も時間も限られたなかでは、コスト効果(修正工数をどれだけ低減できるか)を高めることを常に意識する必要があると考えます。
レビューはシステム開発において非常に「人間くさい」場面といえます。人と人と意見をぶつけ合って最終的に合意に至るにはどうしても「感情がおされられない場面」に遭遇します。例えば、不仲なメンバーが作成した成果物の指摘で、やり込めてやろうという気持ちが生まれたり、以前にやり込められた報復をしてやろうという感情に負けてしまってはレビューは成立しません。
逆に、仲がメンバーの成果物だと、指摘が甘くなったり、問題を見つけても指摘をしないようなことが起きるとレビューを行う意味がありません。
人間は感情の生き物であり、指摘に作成者との人間関係を持ち込むことは、程度の差はあれ、誰でもやってしまうものだと思います。その状況を少しでも減らすために、繰り返してレビューの目的を再確認してほしいと思います。「この問題を指摘することは修正工数の低減につながるのか?」や「修正工数を低減させるために指摘すべき問題をすべて洗い出しているか?」などと自問をすることで、指摘の場に感情を持ち込むことを自制できるようになっていけるとよいと思います。
人は疲れてくるとイライラしやすくなります。とくにレビューが長引いて深夜に及んでしまったとか、成果物で初歩的なミスが頻発してしまったとかでイライラが最高潮になると成果物の欠陥指摘ではなく、相手の人格攻撃をしてしまうことがあります。人格攻撃は決して品質向上につながるわけではなく、時間のムダであり、さらに言えばレビューの雰囲気を悪くするだけです。
人格攻撃をするより「レビューアの指摘に耳を傾けることで品質をもっと高められる」というように、レビューの本質を伝え指摘内容を受け入れるよう促すように努めることが大切です。成果物の内容や作成者の態度がひどくても、冷静さを保ち、レビューの目的を考えて問題を指摘することは、レビューアが持つべき重要なスキルの一つだと思います。また、欠陥指摘の際に言い方にも配慮ができればレビューの雰囲気もよくなり、より効果的に欠陥をしてきあうレビューにできるでしょう。
次回は「意識」の後半について考えてみます。
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セミナー「システム開発におけるレビュー技法」
2015年04月01日 宿澤直正 記
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