ポイント:SaaS、ASP、Web2.0、バズワード
SaaSとは、ソフトウェアをユーザー側に導入するのではなく、ベンダ(プロバイダ)側で稼働し、ソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形態(@ITより)のことです。
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)という言葉が盛んに言われるようになって2年ほどたつでしょうか・・・。それでも「何だか得体の知れない存在」であることには変わらない気がします。その理由は、定義自体が明確ではないからと思います。
SaaSの話をすると必ず質問されることがあります。「ASPとは違うの?」という至極当然の質問です。これに対して「Yes」とこたえるのか、「No」とこたえるのか・・・ 実はそれすらも明確な答えはない状態なのです。どちらも正解といったところでしょう。
一昔前「Web2.0」という言葉が流行やりました。典型的なバズワード(流行言葉)です。今ではその言葉を使う人はほとんどいない気がします。では「Web2.0」は無くなったのでしょうか?
Web2.0の考えにもとづく現象は今でも(いや、流行していた当時よりも)盛んです。当たり前のようにユーザーがブログやSNSを通じて情報発信し、それによってユーザーが様々な意思決定をしています。これはWeb2.0の考え方からの現象といえるでしょう。
私も同じくSaaSもバズワードではないかと考えています。Web2.0の時と同じように、この考え方にもとずいたソフトウェアの提供・利用形態は進化しながら残っていくでしょう。
SaaSもWeb2.0もこのキーワードから始まった現象ではありません。そのときの状況を評して名付けられた「経過表現言葉」だと思います。ブログやSNSというユーザーからの情報発信の道具やパソコンの普及・通信環境というインフラが整って言われ始めたのが「Web2.0」です。
同じくASPというソフトの時間貸しという発想や通信環境・Webサービスの高機能化というインフラが整って言われ始めたのが「SaaS」といえると思います。この2つにはなんとなく同じ匂いを感じるのです。
SaaSの事を「また新しい言葉が出てきて混乱する」「結局ASPなんでしょ」「すぐ消える言葉だから考えなくてよし!」なんていう意見が周囲から聞こえていますが、そう断定してしまうのは少し危難な気がします。
なぜ、「Web2.0」という言葉が出てきたのでしょう。これは消費者が情報発信をしやすい道具が揃った結果で引き起こされた経営環境の変化を表した(オライリー氏が上手く表現した)言葉です。その現象は当たり前のように世の中に息づいています。「Web2.0」という言葉を理解しようとする前に拒絶してしまった人たちにとって、いまのWebの世界の現象を深く考えるのは難しいのではないかと思います。
SaaSも同じで「流行り言葉だから」という理由で理解の前に拒絶してしまうと自分の選択肢を狭めることになります。「SaaS」という言葉を拒絶する前に、なぜこの言葉が生まれてきたのか、その背景にある経営環境をしっかり考えるべきだと思います。「使う、使わない」はその後に考えればよいのです。
SaaSに関しては「昨年の郵政公社の大量導入」という事例をきっかけに様々な事例が出ています、つまり、それらの事例が生まれた背景を考えるべきなのです。
これらがすべてSaaSで解決できるのかというとそうではありません。ただ、SaaSであればそのような解決ができるのであろうか・・・ということを経営課題解決の選択肢の一つとして考えることは決して無駄ではないと思います。
参考「日経ソリューションビジネス2007/10/15号(日経BP社)」
関連コラム2008年10月13日 宿澤直正 記
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