ポイント:SaaS、ASP、システム開発、コスト、パッケージソフト、手作りソフト
先週の水〜金の3日間で「システム開発と運用」の講義をしてきました。その中で「パッケージソフトの利用」という項目があります。「手作りのシステム」と「パッケージソフト」の比較を行なっているのですが、その中にひとつ項目を加えました。「SaaS・ASP」です。
システム構築では、「最適なシステムの形態や構成」は企業のニーズ、そして組織ごとに異なります。そのために、要求分析・要件定義を行い、何度もレビューを行い設計を固めていき、確かな技術でそれを実現していくステップを踏んでいきます。
企業で行なわれる業務が全て同じであれば、コンピュータやネットワークのスペックだけに注目すればよいので、システム構築はとても簡単になると思います。ただ、企業ではそれぞれの経営手法があります。その結果、独自性、差別化がうまれ、各企業は生きていけるのです。
ただ、すべての機能が各社違うかといったらそうではありません。財務・会計や人事・労務といった部分は比較的、各企業で業務としてすべきことが似ています。パッケージソフトはそういった分野から広がっていきました。既製品と言う意味ではパッケージに近い「SaaS・ASP」も同じような道を歩んでいます。
つまり、システム構築の選択肢にSaaS・ASPという考え方が入ってきています。厳密に言うとシステム構築というよりは、システムをサービスとして利用するのですが・・・
SaaS・ASPは総務省・経済産業省の後押しもあって、あくまで予測ですが、今後普及が見込まれています。ただ、SaaS・ASPはシステム構築を簡単にする道具ではありません。確かにシステム導入が様々な視点(初期コスト、開発工数、運用にかかる手間等)で容易ともいえますが、だれもが簡単に導入できるシロモノではないのです。
なぜなら、システム構築で最も難しいとも言える、いわゆる超上流工程といわれる自社の業務を分析するフェーズは必ず存在しますし、パッケージソフトの導入の際の要であるFit&Gap分析は行なわなければならないからです。
SaaS・ASPのメリットとしてよく挙げられるのは、以下の5点です。
これらのメリットが自社のニーズと合致するのであれば、確かにSaaS・ASPは非常によい選択になります。
経営者であれば、@Cのメリットに注目して当然ですが、情報システム部門という資源が乏しいことが多い中小規模の企業にとって、ABのメリットは大きいと思います。また、経営環境の変化が激しい今、Dはどんな企業にとっても重要だと思います。
もちろん、SaaS・ASPのメリットが自社のニーズと合致していないのであれば、無理にSaaS・ASPを導入する理由はありません。従来型のパッケージソフトですませたり、あるいはシステムベンダーにシステム開発を依頼した方がよいという判断も当然残っていくでしょう。
システム導入の選択肢が増えたことは嬉しい限りです。ただ、そのメリット、デメリットをしっかり把握しておく必要があります。
関連コラム2008年10月27日 宿澤直正 記
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