ポイント:BPR、ERP、ERPソフトのメリット・デメリット、業務改革、ヒトが重要
ERPソフトの一つの特徴として、統合データベースという概念がある。個別システムを組んだ場合、それぞれのシステムが個別のデータベースを持つ。実際にERPシステムを名乗っていても、それぞれの個別システムのデータベースをシームレスに連携させて、ERPを名乗っている場合もある。ただ、それは機能の問題で、各システムのデータがリアルタイムで串刺しで見れれば、それはERPソフトと言ってよいのではないかと思う。
ERPソフト導入を考えた場合、個別ソフト開発との比較でメリット・デメリットを考えたい。
個別パッケージのシステム開発 | ERPソフトによるシステム開発 | 手作りのシステム開発 | |
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メリット |
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デメリット |
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「ERPソフトの導入の視点」に関して書かせてもらったが、実はそんな単純な視点だけで、決めるものではない。
ERPソフト導入時には、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)が伴う。と言うか、BPRの結果、必要であればシステムの見直しを行なう。そのシステムの見直しの結果、システムを導入する方法の1つの選択肢としてERPソフトがあるのである。このBPRの結果として、前述したソフト導入方法に関するメリット・デメリットが関係してくるのである。
BPRとは企業活動に関するある目標(売上高、収益率など)を設定し、それを達成するために業務内容や業務の流れ、組織構造を分析、最適化すること、と定義される。詳しくは、時事コラム「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは」にあるので、参照していただけるとありがたい。
しかし、現場ではBPRが先か、ERPソフトを検討するのが先かという議論によくなる。コンサルとして「BPRが先である」と言い切りたいところであるが、そうとも言えない。ERPソフトに業務をあわせるのも、実際に多く行なわれている。そして、それは悪ではない。ERPソフトは、業務のベストプラクティスの具現化であり、それに業務をあわせることにより、今より効率的な業務が実現される事は十分考えられる。
問題なのは、実際の業務とERPソフトの実現する業務のギャップを埋めるために、本来のERPソフトの原型をとどめないほどに、アドオンソフトを開発する事である。これならば、最初から自前のシステム開発をしたほうがよい。
現実には、ERPソフトを変更しないでそのまま導入することは難しいと思う。ERPソフトの機能を尊重しつつ、BPRで必要となった最低限の追加開発を行なうのが、ベターな方法だと思う。
BPRを行い、業務改革を行なう場合、必ず現場から反対の声があがる。これは決して現場が悪いのではなく「ヒトは普通、変化を嫌う」のである。通常は「これは使いにくい」「こんなんじゃ業務は出来ない」「なんてものを導入してくれたんだ」…。
この場合、経営者は現場社員に以下のようなことを伝えなければいけないと思う。
そしてBPRプロジェクトに極力、現場社員を参画させるようにし、それが人数的に時間的に無理であっても、参画していない現場社員にもプロジェクトに参画している意識を持ってもらうことである。
これは文章で書くと簡単だが、実際難しい。会社の事情によっても変わるので決定的な答えはない。ただ、ヒトが絡む問題は常に答えのなく難しいものである。一般的には「経営トップがBPRへの取り組み姿勢を見せる」「社内的にオフィシャルなBPR推進体制を作る」「数値目標を現場に明確に提示する」…などが言われている。
以前、BPRのコラムにも書いたが、BPRで最終的に実現するのは顧客満足よりも、従業員満足が優先すると私は考えている。従業員満足がやがて顧客満足に普及していくはずなのである。
参考「ERP導入実践ガイド(日経BPムック)」
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2006年01月16日 宿澤直正 記
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