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ポイント:企業向け検索ソフト、インデックス、データベース、ファイル検索、EUC、概念検索、経営の見える化、スピード経営

企業向け検索ソフトの活用


企業向け検索ソフトへの注目

 仕事の関係で、中小企業診断士の平成17年度の経営情報システムも問題をみていた。その中で「分りにくいぁ」という問題があった。第10問である。

<問題>
 既存のオンライントランザクション処理(OLTP)システムのデータベースからデータをダウンロードして、意思決定支援システム(DSS)用のデータベースを構築することになった。DSS用データベースを設計する場合、OLTPシステムのデータベースと比べて、最も重視すべきものはどれか。
ア インデックスの活用
イ オンラインバックアップ
ウ データの正規化
エ 同時実行制御機能

 まず、「データをダウンロードして、意思決定支援システム用のデータベースを構築」とあるから、「イ オンラインバックアップ」は不要である。また、意思決定支援システム用のデータベースなので参照のみである。よって「エ 同時実行制御機能」もあまり考えなくてもよい。すると2つからの選択となる。「ウ データの正規化」に関しては、情報系のシステムである意思決定支援システム用のデータベースを考えるときも無縁ではないが、基幹系システムであるOLTPシステムのデータベースを設計する際に重視するものである。正解は「ア インデックスの活用」である。消去法でいけば分らない問題ではない。

 ただ、今の企業では「インデックスの活用」が注目されている。それは「企業向け検索ソフト」を上手く活用することにより、経営意思決定のスピード化の実現を可能にできるからである。

企業向け検索ソフトとは

 「企業向け検索ソフト」とは何であろうか? 聞きなれない人もいると思う。その前にインデックスとは何かを簡単に説明する。データベースとは膨大なデータの集合体である。データベースを作る目的はデータを蓄積し、それを活用する事である。活用の際には膨大なデータからあるデータを検索する必要がある。しかし、膨大なデータをすべて探していては、時間が非常にかかってしまう。そのため、検索によく使う項目を集めて、あらかじめインデックス(索引)を作成しておく。そして検索の際は、膨大なデータではなく、インデックスを探して、必要な情報をすばやく見つけ出す。

 「企業向け検索ソフト」では、データベース、インデックスの概念を、先の例にあげた中小企業診断士の問題より少し大きく持つ。少し大きくというのは、サーバーや各個人のパソコンに入っているEXCELやWord、PDFもデータベースのデータと考える。企業では、各自1台のパソコンが普通になってきており、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)の浸透により、いろいろな種類のアプリケーションで作られた、膨大な量のファイルが、いろいろなパソコンのハードディスクに入っていることが増えている。

 それらの膨大なファイル(データ)から自分の欲しいファイルを探すのは大変なことである。それを可能としてくれのが、「企業向け検索ソフト」である。「企業向け検索ソフト」には、データ収集機能というものがついている。データ収集の実行により、各ファイルサーバ、パソコンを「企業向け検索ソフト」が巡回し、WordやPDFから情報を集め、インデックス(索引)ファイルを作成する。

 このようにインデックスファイルを作成しておく事により、検索時は膨大な各ファイルをすべて探すことなく、すばやく欲しい情報にたどり着く事が可能となる。インターネットでGoogleやYahooで検索すると、膨大な世界中のWebサイトからすばやくキーワードにマッチした情報を表示してくれる。これも実は同じ概念で行われている。

企業向け検索ソフトの課題

 注目を集めている「企業向け検索ソフト」だが、課題はある。最大の課題は、データ収集機能でインデックスを作成するのに時間がかかることである。例えば、データ量が数GBになるとインデックス作成に数時間かかる事もある。GoogleとかYahooの検索結果をみると日付がある。その日付が、最新のデータ収集日付となる。数日のタイムラグがあるのが普通である。「企業向け検索ソフト」でもこれは同じである。ただ、データ収集の間隔は設定ができるものが殆どである。自社の業務では、このタイムラグを何日に設定できるかをシステム設計時に検討する必要がある。

 もうひとつ「企業向け検索ソフト」には重要な課題がある。これは、ソフト側の課題というよりは運用する企業側の課題となる。それは使用用語の統一である。会社で使っている言葉は事前に可能な限り統一しておく必要がある。さもないと、必要なファイル(データ)を検索漏れしてしまう可能性があるのだ。これもGoogleとかYahooを例に出すが、必要な情報がみつからず、キーワードをいろいろ工夫することがあると思う。不特定多数の人が情報を提供しているインターネットの世界ならば、この工夫はしかたがない。しかし、企業では、使用用語を統一することにより、この工夫に要する時間を短縮することが可能である。ただ、この課題に対しては「概念検索」として対策を進めてくれているソフトもある。

 「企業向け検索ソフト」は今注目を集め、これから技術的に進歩していく分野だと思う。「経営の見える化」「スピード経営」というキーワードにもマッチすると思う。ただ、「企業向け検索ソフト」とはあくまでも道具である。データや電子文書が業務に活用されていて初めて効果を発揮する事を忘れてはいけない。

参考 日経コンピュータ '05/12/12

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2006年01月09日 宿澤直正


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