ポイント:システム運用・保守、システム開発、顧客志向、ソフトウェアライフサイクル、TCO、問題解決、コミュニケーション、金融商品取引法(日本版SOX法)
春になり、新入社員のフレッシュな方々を街で多く見かけるようになっています。もうはるか昔ですが、私もそんな時期があったと思います。今、新入社員研修を行なう機会をいろいろいただいていますが、「システム開発と運用」という研修が一番多いです。「システム開発と運用」で、研修のテーマである「システム開発手順を知る」ということ以外に、私が必ず伝えたいと思っているテーマが2つあります。
1つは「システム開発では完成したソフトウェアを納品するのではなく、成功したプロジェクトを納品する」ということです。Q(品質)C(コスト)D(納期)をクリアしたソフトウェアを作り上げたとしても、無理な労働負荷で病人を出してしまっては、そのプロジェクトは失敗ということです。QCDだけでなく、メンバーの健康も大切なプロジェクトマネジメントの要因ということです。これは、また後日書かさせていただきたいと思います。
もう1つは「システム開発と運用でお客さんと接する時間が最も長いのは運用フェーズである」ということです。
「お客さんと接する時間が最も長いのは運用フェーズ」という言葉にどんな意味があるのでしょうか?
まず、企業活動のほとんどが、ITインフラとそれを活用した情報に依存している現在では、そのITインフラを支えるもの、「システム運用」が非常に重要になっていることが上げられます。そして「システム運用」はソフトウェアライフサイクルの中で、最も期間の長いフェーズであり 「システム運用」を効率的にする事が、ソフトウェアライフサイクルでかかるコスト(TCO)を大きく左右するのです。他にも金融商品取引法(日本版SOX法)が施行になることや、ITIL、SLAなどのキーワードに注目が集まるのも「システム運用」の大切さを物語っていると思います。 「システム開発」でのお客さんとのお付合いは「太く短く」です。そしてその後を支える「システム運用」は「細く長く」です。
システム開発は、新しいものを作り上げていくのが仕事です。システム運用は、出来上がったものを快適に使えるように維持していくのが仕事です。「システム開発」と「システム運用」は、どちらも大切です。ただ私が、このコラムで「システム運用」取り上げていることには2つの理由があります。 1つは先に述べた「システム運用は期間が長い」ということ、もう1つは終わりよければ全てよしではありませんが、「開発の後に運用が始まる」ということです。つまり、お客さんの気持ちを考えたとき「システム運用」は本当に大切な位置なのです。「システム運用」に満足してくれたお客さんは次の新規開発案件もきっと発注してくれるでしょう。
私は、新入社員としてソフトウェア開発会社に入社したとき、最初「システム運用」にまわされました。学生時代に雑誌とかにゲームを投稿してプログラミングがしたくて、入社した会社で、いきなり「システム運用」といわれたときには正直がっかりしました。同期の仲間が、最新技術のプログラミング技術の話をしていると、焦ったりもしました。
システムに障害がおきた時、お客さんを訪問します。その時、業務支障が出ているお客さんは大体怒っています。しかし、頑張って保守作業をし、問題を解決したとき、ほとんどのお客さんが「ありがとう」と言ってくれます。
「クレームにいかに対処するかで、企業の本質がわかる」といわれます。「システム運用」は、お客さんが最も切迫した困りごとを解決し、お客さんと最もコミュニケーションがとれる仕事なのです。
私は、今コンサルタントとして活動していますが、このコンサルタントという仕事では、「お客さんと接し、お客さんの困りごとを解決する」という「システム運用」で培った経験がとても活かされています。私のビジネスマンとしてスタートが「システム運用」だった事を今は本当に感謝しています。
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2007年04月09日 宿澤直正 記
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