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ポイント:日本版SOX法、金融商品取引法、J-SOX、内部統制、コスト、実施基準

日本版SOX法(金融商品取引法)の動向で思うこと


日本版SOX法(金融商品取引法)で思うこと

 中小企業経営研究会の雑誌「近代中小企業7月号」に記事を書かせていただきました。「中小企業のための日本版SOX法対策」という部分です。中小企業と日本版SOX法の直接・間接的な関係はまだはっきりとは見てきていないのが実情です。しかし「内部統制」からボトムアップ的にたどり着くコーポレートガバナンス・企業への社会的責任の要請という部分に関しては、やはり中小企業はやはり無視できないと考えます。

 「中小企業と日本版SOX法の直接・間接的な関係はまだはっきりとは見てきていない」と書きましたが、その理由は「実施基準公表の遅れ」です。金融庁は別にいつ発表すると言っている訳ではないので「遅れ」とは言えないかもしれませんが、今年(2006年)の3月頃から「もう発表されるだろう」と噂され、それが「5月、いや6月には発表されるだろう」となり、とうとう今週の日経コンピュータのニュース&トレンドでは「早くて今秋」とありました。

 日本版SOX法にも、少し温度差が出始めていると感じます。私が「日本版SOX法」という一見意味が分らないのだが、何となく凄そうなネーミングを見つけてて、意味を調べてみるとアメリカでは大変なことになっているという衝撃を受けたのが、ちょうど1年ほど前ではなかったかと思います。

 そこから、様々な情報収集をし、セミナー、執筆とかもさせていただきました。途中から「日本版SOX法」というネーミングにコマーシャル的な匂いを感じ、極力、そうならないように気をつけるようにするようになりました。そして「日本版SOX法」は「金融商品取引法」の一部として、6/7に成立しました。

 もう既に「日本版SOX法」ではなく「金融商品取引法24条」と読んだ方が良いのかもしれません。ただ既に「日本版SOX法」という名前が市民権を得てしまった気もしますが・・・。たかがネーミングですが、されどネーミングだと思う機会が最近多いです。全然種類は異なりますが、Web2.0とか・・・。

アメリカでのSOX法の動向

 情報はたくさんあるにもかかわらず、なかなか新しい真実が出てこない日本版SOX法ですが、少し面白い話が、本家のアメリカでおこっているようです。面白いといってはおこられてしまいますね。当然の議論がおき始めているといったほうがよいでしょう。

 SOX法の本場(?)アメリカでの法案成立の背景はもう不要でしょう。アメリカのSOX法では内部統制は404条に求められています。404条での内部統制に「重大な欠陥」があってその報告を怠る(302条)と厳しい罰則がある(906条)ので、企業も対応に躍起になりました。これも復習ですが、「重大な欠陥がある」ことが罰則ではなく、「重大な欠陥があることを報告しない」ことが罰則の対象になります。

 2005年5月に企業が報告した内部統制の「重大な欠陥」は以下のようなものだそうです。

 いろいろ出てきていますが、「重大な欠陥」と考えるレベルがまちまちだと感じます。これはSOX法における適用範囲の考え方、つまり何が財務諸表に重大な影響を与えるのかを「それぞれの企業が合理的に決める」という方法からして仕方が無い事だと思います。

見積もりを大きく越えた内部統制対応費用

 ただ、「仕方が無い」ですましていいのかというとそうでもなさそうです。SEC(米証券取引委員会)はSOX法の内部統制ために必要となる費用は一社当たり9.4万ドルだったそうですが、実際はその20倍に膨らんだとの報告がされています。

 SOX法では「合理的」という言葉で、適用範囲やプロセス、文書レベルなどを決めますが、どうもこの「合理的」という言葉が曲者です。「合理的」という言葉は、結論をきれいにまとめる場合に多用されます。しかし、その結論の実態は抽象的なものになっていることが多いです。これと同じ事、つまり「合理的という名のあいまい」がSOX法でもおきてしまい対応コストがどんどんかさんでいってしまったようです。

 SECでは「合理的」にと述べたのであって、「徹底的に」「完璧に」は求めていないとのことですが、これも私にはよくわかりません。アメリカでは、内部統制の維持コストの削減に関心が集まり、議論されています。それらも反映していただいて、日本版SOX法(金融商品取引法)では、基準がハッキリ明確になっている「実施基準」を策定して欲しいと思います。

 

参考「日経ソリューションビジネス6/15号」

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2006年07月03日 宿澤直正


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