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ポイント:ナレッジマネジメント、情報共有、経営革新、組織風土、形式知、暗黙知、グループウェア、知識

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ナレッジマネジメントが組織に根付かない理由を考える


 ナレッジマネジメントの導入推奨が言われ始めてから、もうずいぶんと年数が経つ。一時期は非常に多くの雑誌で特集をされていたが、最近では少し沈静化しているようだ。なぜ、昔のように騒がれなくなったのだろうか。その最も大きな理由は、ナレッジマネジメントの導入が多く(ほとんど)失敗しているからと考える。

 「IT用語辞典e−Words」によるとナレッジマネジメントは次のように説明されている。


個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法。日本語では「知識管理」などと訳され、「KM」と略されることもある。この場合の知識・情報とは単なるデータである「形式知」だけではなく、経験則や仕事のノウハウといった、普段はあまり言語化されない「暗黙知」までを含んだ幅広いものを指す。
これからの企業経営の重要な要素となると言われており、米国を中心に、対応を急ぐ企業も増えつつある。
ナレッジマネジメントを浸透させることにより、個人の能力の育成や、組織全体の生産性の向上、意思決定スピードの向上、業務の改善や革新の場の提供が実現できるとされている。

 確かに、この説明を読むとナレッジマネジメントは非常に有益な「考え方」であるといえる。ここで私は「考え方」という表現を使った。「IT用語辞典e−Words」の説明を読んでも「考え方」という表現がしっくりくる。何が言いたいかというとナレッジマネジメントとは「考え方」であって「コンピュータのソフトウェア」ではないということである。

 ナレッジマネジメントの失敗事例を調べてみると、非常に多いのが社内LANを構築し、最新のグループウェア(情報共有を目的にメール、掲示板等から構成されるソフトウェア)を導入して、「さぁ、情報共有を行いましょう」と号令だけをかけるパターンである。ナレッジマネジメントの導入はグループウェアという「コンピュータのソフトウェア」の導入であると考えてしまっている例である。確かにグループウェアというソフトウェアは、IT技術の進歩と歩調をあわせて、日々進歩して非常に使いやすくなっている。しかし高機能のグループウェアを導入しただけでは、ナレッジマネジメントの導入は成功していないのが事実である。

 それでは、ナレッジマネジメントの導入させるにはどうすればいいのだろうか? それは、ナレッジマネジメントとは「考え方」であるという言い回しに答えがある。ナレッジマネジメントは「考え方」であり、それを導入するには、その企業にあった導入の仕方をしなければならない。決して、ソフトウェアの導入のようにインストールマニュアル通りにはいかないものだと認識すべきである。

 ナレッジマネジメントを導入する際には次ののことをじっくり考えるとよい。

 ・知識をみんなで共有する組織風土になっているのか?
 ・みんなが欲しい知識とは何か?
 ・みんなは知識を、どのような手段で捜し求めているか?
 ・みんなは知識をどのように活用しているのか?

 他にも様々なことをナレッジマネジメントの導入時は考える必要がある。なぜ、そこまで考える必要があるのか? それは、ナレッジマネジメントの導入はひとつの経営革新だからである。これらのことをじっくり話し合った後で、自分たちの「考え方」に合ったソフトウェアの検討に入る。また、場合よっては、ソフトウェアの導入自体が不要の場合もある。まったく情報が蓄積されていかない高機能のグループウェアのデータベースよりも、みんなが苦労を書き込んだノートの方が何十倍も価値があると私は考える。

 診断士になった後で、ナレッジマネジメントの導入相談を受けることがある。以前は「ナレッジマネジメントを導入したいが、どんなソフトがいいか」という質問のされ方をしていた。しかし、最近は「個人のもっている情報をみんなが使えるようにするには、どうしたらいいか」という質問のされ方に変わってきている。それは「SE」という立場から「診断士」という立場に変わったからかもしれないが、非常に嬉しい出来事と受け止めている。ナレッジマネジメントの導入は「ITの活用ありき」で考えないことが成功の秘訣といえるかもしれない。

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2004年8月30日 宿澤直正

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